かゆみとお灸

こんにちは!スタッフの飯塚です。

「かゆみ」って辛いですよね…(>_<)

今回は、「かゆみ」 について、その仕組みとお灸の効果についてお伝えさせて頂きます。

※ かゆみに限らずあらゆる研究は、新たな研究により情報が更新されていきますので今わかっている話としてご理解ください。

1. かゆみの仕組み – なぜかゆくなるのか?

かゆみとは、皮膚をかく行動(掻破行動)を引き起こす不快な感覚 です。掻破行動は異物の除去や皮膚の恒常性維持のための生体反応の一種と考えられています。

【かゆみの伝達経路】

 かゆみは皮膚の反応が脳へと伝わることで発生します。

① かゆみを知らせる「伝達物質」

 蚊に刺されると、ヒスタミン や サイトカイン(IL-31など) などの伝達物質が放出されます。これらの物質は神経を刺激し、かゆみ信号を発生させます。

② 受容体「鍵穴」とGタンパク質の役割

 神経細胞には、伝達物質を受け取る「受容体」があり、特定の伝達物質だけが結合できます。受容体が刺激されると、Gタンパク質 が活性化し、信号が増幅されます。

③ イオンチャンネルの開放 「神経のスイッチ」

 Gタンパク質が活性化すると、細胞膜の イオンチャンネル(TRPV1・TRPA1 など) が開き、ナトリウムイオンなどが流れ込みます。これにより神経が興奮し、「かゆみ」として脳へ伝わります。

 

 

2. かゆみの原因と悪循環

かゆみは様々な要因で発生し、慢性化すると悪循環に陥ります。

① 皮膚バリア機能の低下

  • 乾燥肌や湿疹では、皮膚の水分保持力が低下し、アレルゲン物質や汗が侵入しやすくなります。
  • これにより免疫反応が活性化し、かゆみ物質が放出されます。

② 炎症と免疫細胞の関与

  • 皮膚の マスト細胞やT細胞 が ヒスタミンやIL-31 を分泌し、かゆみを引き起こします。
  • 慢性化すると、神経が過敏 になり、わずかな刺激でも強いかゆみを感じるようになります。

③ 掻破(かくこと)の悪循環

・かゆいからかく → ・皮膚が傷つく → ・バリア機能がさらに低下 → ・炎症が悪化 → ・もっとかゆくなる という悪循環が発生します。

3. かゆみを軽減する「お灸」の効果

① お灸の仕組み

お灸は 皮膚への温熱刺激 により、消炎鎮痛・免疫機能に作用します。

細胞膜に存在するTRP(トリップ)チャネル というイオンチャネルが、お灸の効果に関係している可能性が高いとされています。

② TRPチャネルとお灸

TRPチャネルは、温度・化学物質・機械的刺激に反応するという事がわかってきました。2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞したデビッド・ジュリアス博士(カリフォルニア大学)とアーデム・パタポウティアン博士(ハワード・ヒューズ医学研究所)は、温度や触覚を感知する体の仕組みを発見し、その中でTRPチャネルが関与していることを明らかにしました。TRPチャネルの中には温度を感知するセンサーの働きや、生体の恒常性を保ち内臓の働きを調整する働きや、免疫反応の調整を行っていることがわかってきています。お灸は温熱刺激により生体反応を発現し症状を変化させる作用があるとされています。お灸とTRPチャネルの関係性はまだ十分に解明されていませんが43℃から15℃で活性化し生体反応を起こすTRPチャネルはお灸と関係があるように私は考えています。以下に温度・化学物質(植物由来の成分も含む)で反応するTRPチャネルを示します。 

TRPチャネル 活性化する温度・刺激
TRP V1 42℃以上熱刺激、カプサイシン、酸
TRP V252℃以上熱刺激、細胞膨張、機械刺激
TRP V332〜39℃温刺激、メントール、カンフル
TRP A117℃以下、マスタードオイル、わさび、にんにく
TRP M826℃以下、メントール、ミント、ユーカリ

③お灸の具体的な効果

 ◆血流改善作用 ◆免疫機能亢進作用  ◆鎮痛・消炎・抗炎作用

④ 実際に試してみた効果

私自身や、または患者さんのかゆみを感じる部分にお灸をしていますがかゆみが緩和して、かゆみの頻度が減る経験をしております。私の今までの経験ではありますが、虫刺されや乾燥によるかゆみは、お灸によって抑えられると考えています。

4.かゆみとお灸の関係

かゆみは TRPチャネル・Gタンパク質・神経のリレー伝達 によって発生します。皮膚のバリア機能が低下し、炎症が悪化すると かゆみの悪循環 に陥ります。

 お灸は、①皮膚の血流改善・免疫調整・消炎・鎮痛 に働く。

②お灸をするとかゆみを軽減させる効果がある。

かゆみに悩んでいる方はぜひお灸を試してみてはいかがでしょうか?