つわりに対する鍼灸治療の考察

 

こんにちは。スタッフの飯塚です。

鍼灸治療を行うとつわり症状が軽減する事を多く経験しますが、鍼灸治療でつわりが楽になるのはどういった理由でしょうか?
鍼灸に関する論文などを参考に考察してみました。
私自身の曲解ではありますがご覧下さい。

鍼灸治療の特徴はストレス反応を緩和して緊張や痛みを抑制することで辛い症状が楽にします。
これはつわりに限ったことではなく鍼灸治療を行うことによって人体で起こる変化です。
具体的には次の作用機序により人体へ効果を発揮します。

①鍼灸は自律神経系の調整を行います。

鍼灸は交感神経と副交感神経のバランスを調整する作用があり、交感神経の過活動を抑制し、副交感神経活動を調整します。(4)

②内分泌系ではストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を適切に制御します。

人がストレスを受けるとコルチゾールの分泌が起きます。
コルチゾールはホルモンの一種で、ストレスを受けると分泌が増加し代謝の促進や抗炎症作用など重要な役割を果たします。
人体にとってコルチゾールは適量が重要で、過剰でも不足でも影響があります。

コルチゾールは視床下部―下垂体―副腎皮質系を介して分泌されます。
いわゆるストレス反応系HPA軸と呼ばれます。

HPA軸とは視床下部(hypothalamus:ハイポーサラムス)、下垂体(pituitary gland:ピチュイタリー グラウンド)、副腎皮質(adrenal cortex:アドレナル コーテックス)からなる神経内分泌系のことを指します。
ストレスを感じると、視床下部からコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)が分泌され、それが下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促します。
ACTHは副腎皮質からコルチゾールの分泌を引き起こします。

通常は体にストレス反応が起きるとHPA軸を介してコルチゾールの分泌が適切に調整されます。(5)

③神経伝達物質の調整を行います。

鍼灸は脳内のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促進し、気分や情動の改善に寄与します。(6)(7)

また、内因性オピオイドのβ-エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンの分泌を促進します。
これらの内因性オピオイドは中枢神経系や末梢神経系のオピオイド受容体に結合して、鎮痛作用や抗ストレス作用を発揮します。
※内因性オピオイドは下行性疼痛抑制系の神経伝達物質として機能し、脳幹部から脊髄後角に下行して痛みの伝達を遮断します。(8)

④心理的要因の影響も鍼灸刺激後に起こります。

鍼灸は心理的不安に対しても効果があると報告されています。

不安を感じている人への鍼治療を行った比較試験は、試験に対する不安に偽のレーザー鍼治療と比較して、両側の神門穴(HT7)での鍼治療の有効性を調査するために、信頼性の高い無作為比較試験(RTC)を行いました。

ドイツ連邦教育省の研究によると、被験者へ試験に対する不安はトリーアソーシャルストレステスト(TSST)の標準化されたプロトコルを適用し不安を誘発しました。

その後、手両側の神門穴へ刺鍼したグループとレーザー鍼の偽刺激グループでわけました。
測定には、コルチゾールとアミラーゼについて分析された唾液サンプル、不安アンケート、心拍数の変動が含まれます。

比較試験の結果は両手神門穴への刺激群は心拍数の低減、コルチゾール、アミラーゼ活性の変化が見られ、心理的な不安が鍼治療により減少したと報告されています。(9)

以上のことから鍼灸をすることでつわり症状が軽減されるのはHPA軸による適切なコルチゾールの分泌と脳内から内因性オピオイドが分泌されて鎮痛・鎮静作用の発揮、ストレス反応の緩和により、つわりの症状が緩和するのではないかと考えました。

鍼灸治療はGDF-15の作用とは違う要因でつわり症状が軽減するのではないかと考えています。

参考文献

  1. GDF-15は妊娠中の吐き気や嘔吐などのつわり症状に関連している:https://www.nature.com/articles/s41586-023-06921-9
  2. GDF-15(以前は“MIC-1”とも言われていた)について、妊婦の血清中に高濃度に存在:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11134143/
  3. GDF-15は脳幹部に特異的に存在する受容体に結合することで、通常の体重調節メカニズムとは異なる、いわゆる「非ホメオスタシス的」な体重調節を行う:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28953886/
  4. 鍼治療効果と中枢自立神経調整:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3677642/
  5. ストレス管理における鍼治療の役割:https://www.jrespharm.com/text.php?id=290
  6. 鍼灸治療が神経-内分泌-免疫ネットワークシステムを制御するメカニズムに関する研究の進展:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8402722/
  7. 鍼灸の作用機序から神経内科領域の可能性を探る:
    https://mhlwgrants.niph.go.jp/system/files/2012/124011/201232030A/201232030A0005.pdf
  8. 〜鍼治療〜鎮痛効果に関する新たな証拠(総説):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4471669/
  9. 試験不安の予防における一点鍼(HT7)の効果、 RCTの結果:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0202659

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.